32年ぶりの金へ——侍ジャパン社会人代表、地元・愛知で頂点に挑む【アジア競技大会2026・野球】
アジア最大のスポーツの祭典が、いま日本を舞台に動いている。「第20回アジア競技大会(愛知・名古屋2026)」は2026年9月19日から10月4日まで、愛知県と名古屋を中心に開かれており、名古屋は1958年の東京、1994年の広島に続く3番目の日本開催都市となった。そのなかでも、野球ファンの視線が熱を帯びているのが男子野球競技だ。野球は2026年9月21日から27日まで、愛知県の豊橋市および岡崎市で行われる。
日本にとっては特別な大会である。1994年の広島大会以来、実に32年ぶりの日本開催であり、同時に32年ぶりの金メダルを狙う戦いでもある。舞台は整った。あとは、社会人のプライドを背負った侍たちがどこまで走れるかだ。
「社会人だけ」で編成された侍ジャパン
まず押さえておきたいのが、今回のチーム構成である。アジア競技大会の野球日本代表には、プロ野球(NPB)やメジャーリーグ(MLB)からの選手招集はなく、社会人野球の選手だけでチームが編成されている。いわゆる「侍ジャパン社会人代表」だ。トヨタ自動車やENEOS、日本生命といった企業チームで鍛え上げた24人が、日の丸を背負う。
指揮を執るのは川口朋保監督。玉野武知、山田幸二郎、加藤徹の各コーチが脇を固める。チームは9月15日から神奈川県内で直前合宿を張り、17日と18日にはオープン戦をこなして開幕に備えた。川口監督が直前合宿を1日前倒ししてまで重視したのが、チームワークの醸成だった。所属チームがバラバラの社会人代表にとって、「このメンバーでやるぞ」という意思統一こそが、短期決戦を勝ち抜く土台になる。
なお、開幕直前にはアクシデントもあった。日本野球連盟は9月11日、松田賢大投手(バイタルネット)がコンディション不良で欠場し、谷脇弘起投手(日本生命)が代わってメンバー入りすると発表している。
注目のメンバー——甲子園優勝経験者とプロ注目の逸材が集結
24人の顔ぶれには、アマチュア球界の第一線で活躍する実力者がずらりと並ぶ。
打線の中心と目されるのが、恵まれた体格から長打を放つ大型スラッガー・藤澤涼介(東京ガス)だ。長打力に確かなコンタクト能力と走力を兼ね備え、中軸としての一発が期待される。そして大阪桐蔭時代に春夏連覇を経験した山田健太(日本生命)、東邦で選抜制覇を成し遂げた熊田任洋(トヨタ自動車)といった甲子園の頂点を知る内野陣が中軸を支える。
チームをまとめるのは主将の逢澤崚介(トヨタ自動車)。左の強打者で、明大出身の攻守の柱だ。投手陣では、30歳のベテラン右腕・嘉陽宗一郎(トヨタ自動車、亜大出身)が経験で引っ張り、快速左腕の樋口新(王子)が先発の軸となる。捕手には辻本勇樹(NTT西日本)や有馬諒(ENEOS)が控え、巧みなリードで強打のライバルを迎え撃つ。
そのほか、昨夏の都市対抗で若獅子賞に輝いた走攻守三拍子そろう柴崎聖人(王子)ら、一打で試合の流れを変えられる選手が名を連ねる。「大人の真剣勝負」を体現する、まさに社会人野球の精鋭たちだ。
出場チームとグループ分け
今大会に出場するのは、アジアの8チーム。オープニングラウンドは4チームずつ2つのグループに分かれて争われる。
- グループA:日本、中国、フィリピン、パレスチナ
- グループB:韓国、チャイニーズ・タイペイ、ホンコン・チャイナ、タイ
大会最大の優勝候補は、なんといっても韓国だ。前回大会(2022年・杭州、新型コロナの影響で2023年に開催)まで4連覇を達成しており、アジア競技大会の野球では史上最多となる通算6個の金メダルを誇る。グループBでは、その韓国と、2006年ドーハ大会を制した実力国チャイニーズ・タイペイが同居し、初戦から潰し合う「死のグループ」の様相を呈している。
一方の日本が入ったグループAは、比較的力の差がある組み合わせ。初戦の中国は近年着実に力をつけているものの、アジア大会の野球ではこれまでメダルに手が届いておらず、実に7大会連続で4位に終わっている。フィリピン、パレスチナを含め、日本としてはまず確実に勝ち星を積み上げ、上位でスーパーラウンドに進みたいところだ。
大会方式は、各グループの上位2チーム(計4チーム)がスーパーラウンドに進出。スーパーラウンドではグループAの上位2チームとグループBの上位2チームが対戦し、その成績上位2チームが決勝、残る2チームが3位決定戦に回る。
試合日程——日本は3日連続でオープニングラウンドへ
野球競技の日程は、大きく2つのブロックに分かれている。オープニングラウンドが9月21日(月)〜23日(水)、スーパーラウンドおよび順位決定戦が9月25日(金)〜27日(日)だ。日本はシルバーウィークの連休中に、3日連続でオープニングラウンド3試合を戦う。
日本代表(侍ジャパン社会人代表)の日程は以下の通り。
| 日付 | 対戦カード | 開始時間 | ラウンド |
|---|---|---|---|
| 9/21(月) | 日本 vs 中国 | 18:30 | オープニングラウンド |
| 9/22(火) | 日本 vs パレスチナ | 18:30 | オープニングラウンド |
| 9/23(水) | 日本 vs フィリピン | ※要確認 | オープニングラウンド |
| 9/25(金)〜26(土) | スーパーラウンド/順位決定戦 | ― | 順位に応じて決定 |
| 9/27(日) | 3位決定戦 | 12:00(岡崎中央総合公園野球場) | メダル決定 |
| 9/27(日) | 決勝 | 18:30(豊橋市民球場) | メダル決定 |
スーパーラウンドの対戦カードは、オープニングラウンドの順位が出そろってから確定する。大会は最終日の9月27日(日)に、3位決定戦(12:00・岡崎)と決勝(18:30・豊橋)が組まれ、ここで金・銀・銅のすべてが決まる。
初戦・中国戦は11得点で快勝発進
そして侍ジャパンは、上々のスタートを切った。初戦の中国戦、日本は六回の猛攻で相手を突き放し、12安打11得点で白星発進を飾った。
試合は簡単ではなかった。二回に2死からの連続二塁打で1点を先制され、追う展開に。それでも四回、先頭の向山基生が右中間への二塁打で好機をつくると、暴投で三進後、逢澤崚介の中前適時打で追いつく。さらに熊田任洋の二塁打で好機を広げ、1死二、三塁から山田健太が右前へ2点適時打を放って3-1とリードを奪った。
勝負を決めたのが六回だ。先頭・熊田のこの日2本目の二塁打を足がかりに、山田の左前打と相手失策で1点。さらに2死満塁から向山、逢澤、水谷祥平の3連続適時打などで打者一巡の猛攻を見せ、一挙6点を奪った。
マウンドも安定していた。先発の樋口新が走者を背負いながらも要所を締め、6回を投げて10奪三振・無四球の1失点と試合をつくり、七回から嘉陽宗一郎、八回から渕上佳輝と小刻みな継投でリードを守り切った。ちなみにこの試合、中国は7失策と守備の乱れが目立った。
歴代の優勝国とメダルの歴史
野球がアジア競技大会の正式競技になったのは、1994年の広島大会から。それ以降、金メダルを分け合ってきたのは韓国・チャイニーズ・タイペイ・日本の3か国だけで、中国はいまだメダルに届いていない。歴代の表彰台は次の通りだ。
| 開催年 | 開催地 | 金 | 銀 | 銅 |
|---|---|---|---|---|
| 1994 | 広島(日本) | 日本 | 韓国 | チャイニーズ・タイペイ |
| 1998 | バンコク | 韓国 | 日本 | チャイニーズ・タイペイ |
| 2002 | 釜山 | 韓国 | チャイニーズ・タイペイ | 日本 |
| 2006 | ドーハ | チャイニーズ・タイペイ | 日本 | 韓国 |
| 2010 | 広州 | 韓国 | チャイニーズ・タイペイ | 日本 |
| 2014 | 仁川 | 韓国 | チャイニーズ・タイペイ | 日本 |
| 2018 | ジャカルタ | 韓国 | 日本 | チャイニーズ・タイペイ |
| 2022 | 杭州※ | 韓国 | チャイニーズ・タイペイ | 日本 |
※2022年杭州大会は新型コロナウイルスの影響で2023年に開催。
国別の通算メダル数を見ると、韓国が金6・銀1・銅1と圧倒。チャイニーズ・タイペイが金1・銀4・銅3、日本は金1・銀3・銅4と続く。注目すべきは日本で、金メダルこそ1994年の広島大会の一度きりだが、これまでの全8大会すべてで表彰台に上がっている「安定感」を誇る。逆に言えば、頂点はこの32年間ずっと遠かった。だからこそ、地元開催で挑む2度目の金には、特別な意味がある。
視聴方法——U-NEXTが独占ライブ配信
「観たい」という人のために、視聴手段も整理しておこう。アジア競技大会の野球競技は、U-NEXTでのライブ配信が予定されている。日本代表戦は同サービスで生配信されるほか、見逃し配信にも対応する見込みだ。U-NEXTは月額2,189円(税込)だが、31日間の無料トライアル期間中でも対象競技を追加料金なしで視聴できる。
なお、現時点では地上波(TBS系列)の番組表に野球中継の予定は入っていない。リアルタイムでの観戦はネット配信が中心になりそうだ。試合の結果速報については、Yahoo!のスポーツナビでもスコアや一球速報、成績が随時更新されている。
地元・愛知の球場で、社会人の意地とアマチュア魂がぶつかり合う一週間。32年という時間の重みを、今度こそ金色で締めくくれるか。侍ジャパン社会人代表の快進撃に、期待したい。
大会データ(早見表)
- 大会名:第20回アジア競技大会(愛知・名古屋2026)
- 野球競技期間:2026年9月21日(月)〜9月27日(日)
- 会場:豊橋市民球場、岡崎中央総合公園野球場(いずれも愛知県)
- 出場チーム:日本、中国、フィリピン、パレスチナ、韓国、チャイニーズ・タイペイ、ホンコン・チャイナ、タイ(計8チーム)
- 日本代表:侍ジャパン社会人日本代表(NPB・MLBからの招集なし)
- 監督:川口朋保
- 初戦結果:日本 11−1 中国(9月21日)
- 決勝:9月27日(日)18:30/豊橋市民球場
- 配信:U-NEXT(ライブ・見逃し)
